サンゴスの玉
「サンゴスの玉」は、屋久島に伝わる民話です。
むかし、むかし。
あるところに、母と人木という息子と二人、ほそぼそとくらしていました。
人木は山に行ってたきぎ木をとってきて売り、それでくらしをたてていました。
ある日のこと。
人木はいつものように山に行きました。
昼飯どきになったので、持ってきたにぎり飯を食おうと思って見ると、たしかに木の股につりさげておいたのにありません。
どうも不思議でなりませんでしたが、猿でも食ったのだろうと思って、別に腹もたてず、ひもじさをこらえました。
翌日も、木の股につりさげていたら、またなくなっていました。
その翌日も、にぎり飯はありませんでした。
どうも不思議やなあ、と思いながら、たきぎを背負って山をおりて行きました。すると、そのとき、
「こら、こら、人木」
とどこからか声がしてくるのです。
「はい。わたしの名前を知っている人はだれですか。」
人木がこういって、あたりを見まわすと、丈の高いじいさんが杖をついて立っていました。
「わしは、この山のずっと奥山の山寺の和尚じゃ。
おまえのにぎり飯は三日ながらわしがもらったが、おまえは怒りもせず、心がけのよいやつじゃ。
しかしひもじかったろう。悪かったな。じゃが、わしはおまえの心をためしてみたのじゃ。」
「そうでしたか。」
「この山を越え、向うの里をすぎて、ずっと行けば奥山にわしの寺があるから、明日は出かけて来てくれんか。」
「はい。」
そして、たちまち和尚さんの姿は見えなくなりました。
それから急いで家にもどって、人木は母に相談しました。
「おっ母ん、じつはこうこういうわけで、すまないが明日から二、三日ひまをくれないか。
山寺の用がすんだらすぐもどってくるから。」